太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)


何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。 (冒頭より)



私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 (amazonより)


すっごく面白かった。自称水尾さん研究のストーカーの主人公。そして、もてない仲間たち。まず、キャラが立ってる。文体がおもしろい。内容がいい。水尾さんはほぼ出てこないんですが、主人公の過去の妄想?の中だけはでてきます。

鴨川の河原を歩きながら、「ペアルックは厳禁しましょう。もし私がペアルックをしたがったら、殴り倒してでも止めて下さい」と言う。 琵琶湖疏水記念館を訪れ、ごうごうと音を立てて流れる疎水を嬉々として眺めている。 私の誕生日に「人間臨終図鑑」をくれる。 駅のホームで歩行ロボットの真似をして、ふわふわ不思議なステップを踏む。 猫舌なので熱い味噌汁に氷を落とす。 ドラ焼きを二十個焼いて呆然とする。 私が永遠にたどり着けない源氏物語「宇治十帖」を愛読する。 コーンスープにご飯をじゃぼんと漬けて食べるのが好きと言う。 大好きなマンガの物語を克明に語る。 録画した漫才を一緒に見ましょうと言う。 何かを言った後に、自分はひどいことを言ってしまったと悲しむ。 下鴨神社の納涼古本市に夢中になる。 雀の丸焼きを食べて「これで私も雀を食べた女ですね」と言う。 よく体調を崩して寝込む。 私が差し入れた鰻の肝で蕁麻疹を出し、かえって健康を害する。 招き猫と私をぴしゃりと冷たくやっつける。 初雪を前髪に積もらせる。 「私のどこが好きなんです」と言って私を怒らせる。

こんなこ。夜は短し、歩けよ乙女の黒髪の乙女に通じるものがあるね。ほとんど、でてこないけど。。。なんというか、冬の町の冒険譚?みたいなかんじなのかな?解説で「ライ麦畑でつかまえて」と比較してる部分もあったけど、そういう感じではないような気がする。なんというか、妄想、そして妄想。そして、名言がこれ
「我々の日常の90パーセントは、頭の中でで起こっている」
最初っから最後まで楽しめて読めました。太陽の塔を見て、
「凄いです。これは宇宙遺産に指定されるべきです」と言った、水尾さんはかわいいに違いないと私の妄想は言っている。